2012年8月3日金曜日

08年~09年かけてのフィールドワーク:横浜・桜木町、高架下

先日ある集まりでお話を聞く機会があったアーティストの Houxo Que [ホウコォ キュウ]さんが、現在グループ展「Post dpi」 に参加されている。展示については拝見してから何か書けたらと思っているのですが、Queさんのお話を伺ったとき、ご自身の表現のルーツがグラフィティにあるというのを聞いて、昔自分が桜木町のフィールドワークやってたの思い出したので、以下今回はその話を。

カバーされた高架下

このフィールドワーク(呼ぶとしたらそう呼ぶというぐらいで、実態はたださまよってたのだが)は、桜木町の高架下で、主に08年から09年にかけてやったものだ。flickr上に写真は載せてるけど、まとまったテキストは書いてない。今からでもなんか書くことはできるだろうか? あまりプランはないのだけれど、とりえず新たに調べたりはせず、当時やったこと、考えたことをこの機会に少し記しておく(twitterでまとめてある写真を紹介するぐらいで軽く書こうとしたら、数post分になったので、記事にすることにした)。

08年から09年というその時期は、旧東横線の高架下歩道(一方は国道18号線に接している)の壁面を1キロ以上にわたり延々と覆ってた、グラフィティを撤去する大規模な工事が行われた時である。そういえば、工事前の時点で、一部が既にリーガルウォール化だかなんだかされて、みたいなこともあった(もともと期限付きのプロジェクトだったリーガルウォールを撤去するのが今回の工事である、みたいな論理=説明もあったっけ)。その時の自分の感覚では基本的に、他にも色々なところを見ていた横浜という都市のフィールドワークの一貫として行ったもので、グラフィティ・カルチャーにおいてあの場所がどういう場所だったのか、までは追えていない。資料での調査もこの件に関してはほとんどしてなくて、ただただそこを訪れ歩き、写真を撮っていた。

調査はしてないが、一目瞭然なことはあった。その高架下歩道は、壁面が様々なグラフィティで覆われることで、長年にわたって非計画的に作り上げられてきた独特の物理的環境となっていた。そこにしかない風景が形作られていたわけだ。またそれは、高架下歩道という独特の都市構造物であり、道路に面した部分は開け放たれてる(壁はない)ものの、トンネルのような空間性があった。一方から光が入るため、その時の光の様子によって、その空間はドラマティックに変化した。そしてそのトンネルのような空間の表面は様々な、落書き~グラフィティで覆われていた。横浜という都市の中、そのトンネル(高架の向こう側はみなとみらいだ)をスタスタ歩いて行く感じ...。

それらが、都市計画的に、まとまったお金を投下され、ぐっと凝縮された時間で変化させれられる様子、それが自分がこのフィールドワークで目撃し、捉えようとしていたものだ。クリシェを使うと、それは「暴力的な」変化というようなものだったろう。「暴力」という語の感じは、写真の中にある、肌を剥がされたような壁の姿からも理解してもらえるだろう。私の写真だけでは、工事のあるプロセスでの、鳴り響いていたってレベルじゃないほんとすさまじい壁を削っていたのだろう音や、削った後の独特の匂いまでは伝えることができないのだが。

桜木町・高架下歩道

「暴力」ということばの使用が、価値判断を含みすぎだとしたら、ただ「力」と言ってもいい。大きな「力」の行使が目に見えるかたちで現れるのを見た。そして、そのように何かを大きく変化させることができる「力」を「われわれ」が持っているということは、ある時には素晴らしいことでもあろうとその時考えたのも覚えている(で、これはどうなの?って)。と同時に、これからそこを歩く時は、常に「失われた」状態としてその空間を感じるのだろう思ったことも。光によるドラマティックな効果は今もおこっている。薄暗い日もあれば、素晴らしい光が差し込む日もある。それぞれのスピードで歩く人、自転車で走り抜ける人が、ツルんとした壁を背景に浮かび上がる。

DSCF9648

※このフィールドワークの写真は、桜木町・高架下歩道/グラフィティ/撤去工事 - a set on Flickr からご覧いただけます。リンク先説明にあるように、スライドショーでの閲覧がおすすめです。写真は撮影日が新しい順で並んでいます。一部、高架下ではない、その高架下周りの写真も含んでいます(そのほとんども失われたと分かるでしょう)。また、同じく記していますように、在りし日の高架下歩道グラフィティの様子(といってもそれはグラフィティというものの性質上固定したものではなくある時間的な流れの中で変化していたわけですが)は、他の方々がflickrに投稿されている写真からうかがうことができます。

都市構造物

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